通関士のすべてがわかる！仕事内容・資格・勉強法まで徹底解説

本記事を書いたのは元通関業者勤務のペーパー通関士です。

通関士の仕事内容と役割

通関士とはどのような職業か

通関士は、海外から日本へ、また日本から海外へ物を送るときに必要な手続きを行う専門の仕事です。この手続きは「通関」と呼ばれ、税関という役所に対して申告や確認を行います。たとえば、輸入されるチョコレートに税金がいくらかかるか、正しく書類を作って申告するのが通関士の役目です。

この職業の魅力は、貿易という大きな動きを支える役割がある点です。

• 税関への申告や相談を行う
• 法律に基づいて正しく書類を作る
• 貿易の安全と正確さを守る

世界中の商品が日本に届くための大切な橋渡し役として、社会にとても必要とされる仕事です。

通関業者での主な業務内容

通関士が働く場所は主に「通関業者」と呼ばれる企業です。ここでは、輸出入する荷物の書類作成や確認、税関への申告、そして荷物のスケジュール管理まで幅広い仕事をこなします。

具体的には次のような仕事があります。

• 輸出入に必要な書類を準備する
• 税関へ電子申告を行う
• 書類のミスや不備をチェックする
• 検査や審査への対応をする

たとえば、輸入されるおもちゃの中に禁止された素材が使われていないかを確認し、税関からの質問に対応するのも通関士の役割です。多くの関係者と連絡を取り合う必要があるため、チームワークも大切です。

必要な知識とスキル

通関士になるためには、法律の知識だけでなく、数字に強く、正確に作業する力も必要です。たとえば関税法や通関業法という決まりごとを理解し、それに沿って書類を作らなければなりません。

求められる力をまとめると、以下のとおりです。

• 法律に関する基礎知識
• 英語での単語の読み取り力
• 計算やデータ入力の正確さ
• 書類ミスを防ぐための注意力

たとえば、インボイスという書類に記された「ペン1,000本」と「価格10,000円」の内容に誤りがないか確認するのも重要な仕事です。ミスを減らすには、丁寧な作業が欠かせません。

輸出入業務における通関士の重要性

海外とのやり取りでは、法律やルールに違いがあります。通関士はそれらを正しく理解し、手続きを進めることで、輸出入の信頼性を守ります。もし手続きを間違えれば、荷物が止まり、企業や消費者に大きな影響が出てしまいます。

通関士がいることで得られるメリットは次のとおりです。

• 輸出入の手続きがスムーズになる
• 間違いによるトラブルが減る
• 法律に合った対応ができる

例として、食品を輸入する場合には、成分や製造方法の確認が必要です。こうした書類の確認や説明を税関に代わって行うのが、通関士の大事な役目となります。

通関手続きの流れと書類

通関手続きの基本的な流れ

通関手続きとは、外国からの荷物を日本に入れたり、日本から外国へ送ったりするために行う大事な手続きです。流れをきちんと理解することが、通関士の基本になります。

結論から言えば、通関手続きは「書類の準備→申告→審査→許可」という順で進みます。

この流れをわかりやすく整理すると、以下のとおりです。

• インボイス（品物の明細）などの書類を準備する
• 税関に電子申告する（通関士が代理）
• 税関が内容を審査・検査する
• 問題がなければ許可が出て荷物が動かせる

たとえば、お菓子を輸入する会社が通関手続きをする場合、「何がどれだけあるのか」「どの国から来たのか」「金額はいくらか」などをまとめた書類を税関に出します。それを通関士が確認し、スムーズに通過できるように手続きを行います。

必要な書類とその役割

通関手続きにはたくさんの書類が必要になります。その中でもよく使うものを理解しておくことが大切です。

主に使われる書類は以下のとおりです。

• インボイス（送り状）：何をいくつ送ったかが書かれた明細書
• パッキングリスト：品物がどう梱包されているかの説明書
• 輸出入申告書：税関に提出する正式な書類
• 原産地証明書：どこの国で作られた品物かを証明する書類

これらの書類が正しくそろっていないと、税関で止められたり、追加の説明を求められたりします。たとえば、原産地証明書がないと、その品物が高い関税の対象になることもあります。

そのため、通関士はそれぞれの書類の意味を理解し、正しく作成・チェックする力が必要です。

申告書の作成方法

輸出入申告書は、税関に対して正式に「この荷物をこういう条件で出し入れします」と伝えるための大事な書類です。内容が正確でないと許可されないため、作成には注意が必要です。

ポイントは次のとおりです。

• 品目や数量、価格を間違えずに書く
• 関税分類番号（HSコード）を正しく記入する
• 英数字は正確に入力する
• 使用する単位（kgやnoなど）を統一する

例えば、りんご100kgをアメリカから輸入する場合、「フルーツ・りんご」「数量：100kg」「価格：10万円」「原産国：アメリカ」などを正しく記載する必要があります。

通関士は、これらの項目が漏れなくミスなく書かれているかを最終確認し税関に提出します。

審査過程と注意点

税関に申告したあとは、内容の審査が始まります。このとき、通関士は税関からの質問や確認に対応しなければなりません。

審査で見られるポイントは次の3点です。

• 品物の内容と書類が一致しているか
• 関税や消費税の金額が正しいか
• 禁止品や規制品が含まれていないか

たとえば、電池の入ったおもちゃを輸入する場合、輸送中に発火する危険があるため、税関が厳しくチェックします。その際、通関士は追加書類の提出や説明などで対応する必要があります。

こうした対応をスムーズに行えるよう、通関士は日頃から関係法令を理解し、最新情報に注意を払っておくことが求められます。

通関士の資格と試験

国家資格としての通関士

通関士は、国が認めた国家資格です。つまり、誰でも名乗れる職業ではなく、試験に合格しなければ正式に通関士として働くことはできません。この資格を持っていることで、企業からの信頼も高まり、仕事の幅が広がります。

国家資格である通関士の特徴は以下のとおりです。

• 税関とのやり取りに必要な専門知識が求められる
• 合格者には「通関士登録証」が交付される
• 独占業務（通関書類の作成・申告）がある

たとえば、会社で働いている人が、より専門的な仕事を任されるために通関士の資格を取るケースも多く見られます。資格を持っていると、社内外での評価も大きく変わってくるのです。

受験資格と合格率の解説

通関士試験は、年に1度だけ行われる国家試験です。受験するための条件は特にないため、年齢や職業に関係なく誰でもチャレンジできます。学生や主婦、社会人などさまざまな方が受験しています。

合格率はおよそ10%〜15%とやや低めです。その理由は、試験範囲が広く、法律の知識や実務の理解が必要とされるためです。

試験に関するポイントは次のとおりです。

• 毎年10月第１日曜頃に実施される
• 合格率は10〜15%前後で推移
• 受験資格に制限はない
• 申し込みはインターネットと郵送で可能

たとえば、働きながら勉強する人は、早めに計画を立ててコツコツと進めていくことが合格への近道になります。

試験科目と勉強方法

通関士試験では、大きく3つの科目が出題されます。それぞれの科目に合格基準があり、どれかが欠けても合格できません。法律の知識だけでなく、実際に書類を作成する力も問われます。

試験科目は以下の3つです。

• 通関業法：通関業に関する基本ルール
• 関税法等：関税や輸出入の法律知識
• 通関実務：書類作成や申告に関する実技問題

勉強法としては、次のような方法が効果的です。

• 過去問を何度も解く（繰り返しが大切）
• 模擬試験を活用する（試験形式に慣れる）
• 法律用語は図や表で整理して覚える

たとえば、過去5年分の問題をしっかり解けば、出題傾向をつかむことができます。苦手分野を見つけたら、重点的に勉強するのもポイントです。

資格取得への流れ

通関士になるには、まず試験に合格し、そのあと登録申請を行う必要があります。資格を取って終わりではなく、通関業務を行うにはさらにステップがあることを知っておくとよいでしょう。

資格取得の流れは以下のとおりです。

1. 通関士試験に申し込む
2. 試験を受験し合格する
3. 合格後、「通関士登録証」を申請する
4. 通関業者などで実務経験を積む

たとえば、合格後にすぐに働けるように、あらかじめ通関業者への就職活動をしておくとスムーズに仕事を始められます。しっかりとした準備が成功への第一歩です。

通関士の年収と将来性

通関士の年収について

通関士の年収は、働く会社や経験年数によって大きく変わりますが、平均すると約400万円から600万円とされています。特に大手企業や専門性の高い通関業務を扱う会社では、それ以上の収入も見込めます。

以下の点を参考にしてください。

• 初任給は月20万円前後が一般的
• 経験を積むことで昇給が期待できる
• 資格手当が支給される企業もある

たとえば、通関士の資格を持っていることで、他の社員よりも早く昇格のチャンスをつかむこともあります。給与アップを目指す方にとって、有利な資格といえるでしょう。

今後の需要と将来性

通関士の需要は、世界的な物流の拡大により今後も高まると予想されています。とくにインターネット通販の拡大によって、個人輸出入も増えており、それに伴い通関手続きの専門家である通関士の役割も重要になっています。

需要が見込まれる理由には次のような点があります。

• 海外取引が増加している
• 通関手続きがますます複雑になっている
• 人材不足が深刻化している業界である

このように、今後も安定して働ける職業として注目されているのが通関士です。

職業としての魅力

通関士の魅力は、専門性の高さとやりがいにあります。国際的な取引に関わる仕事なので、毎日が新しい発見に満ちています。

たとえば次のような点が魅力です。

• 国をまたぐ仕事に関われる
• 専門職として社会的信頼が高い
• 資格を活かして長く働ける

事務職の中でも専門性が高いため、知識を武器にキャリアアップしていきたい方にぴったりの職業です。

働く場所の選択肢

通関士が働ける場所は、実はたくさんあります。一般的な通関業者だけでなく、貿易会社や物流企業、倉庫業などでも活躍の場があります。

働く場所の例は以下のとおりです。

• 通関業者（専門的に通関業務を行う企業）
• 輸出入を行う製造業や商社
• 国際物流を扱う運送会社や倉庫業者

たとえば、貿易実務に関心がある方であれば、商社で通関業務に携わることも可能です。自分の興味や得意分野にあわせて職場を選ぶことで、より充実したキャリアを築くことができます。

通関士に向いている人とは

必要な性格と適性

通関士に向いている人にはいくつかの共通点があります。細かい作業が得意だったり、計画的に物事を進めるのが好きな人には特に適した職業といえるでしょう。

向いている性格の特徴は以下のとおりです。

• 注意深くミスを減らせる
• 法律や制度に関心がある
• コツコツ努力を続けられる

たとえば、パズルを解くのが好きな人や、スケジュールを立てて行動するのが得意な人は、通関士の仕事に向いています。また税関や顧客との確認も必要不可欠ですのでコミュニケーション能力も欲しいところです。

興味とスキルのチェックポイント

通関士を目指すうえで、自分に合っているかを見極めることが大切です。以下のような点に興味があれば、向いている可能性が高いといえます。

• 貿易や物流に関心がある
• 国際的な仕事にあこがれている
• 書類を正確に書くことが好き

たとえば、「海外の商品がどのように日本に届くのか知りたい」と思ったことがある方は、通関士の仕事に魅力を感じやすいタイプかもしれません。

通関業界での活躍方法

通関士として活躍するには、資格を取ったあとの努力も大切です。知識を深めながら経験を積むことで、より多くの仕事を任されるようになります。

活躍するためのポイントは次のとおりです。

• 実務経験を積む
• 法改正や制度の変更に敏感である
• 積極的に情報を収集する

新しい税制が導入された場合、それをすぐに理解して対応できる力が求められます。学び続ける姿勢がキャリアを伸ばす鍵になります。

求人情報と就職先の紹介

通関士の求人は、ハローワークや求人サイト、大手企業の採用ページなどで見つけることができます。実務経験がある人ほど有利になる傾向があるため、まずは未経験でも採用してくれる企業に応募してみるのがおすすめです。

求人の探し方や就職先は以下のようになります。

• 通関業者の新卒・中途採用情報
• 貿易会社や倉庫会社の求人ページ
• 転職エージェントを活用する

たとえば、「通関士 未経験 正社員」といったキーワードで検索すれば、初心者でも応募可能な求人を見つけることができます。焦らず一歩ずつ前に進んでいきましょう。

この記事を読んでひとりでも多くの方が通関士という職業に興味を持っていただければ幸いです。