
筋肉が・・・
一緒にムキムキになろう!

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【シニア前期】対象:足腰に不安を感じ始めるシニア期はじめ頃の犬
はじめに:老犬の筋肉はなぜ減っていくのか?
老犬がよろけやすい、後ろ足が細くなる、立ち上がりに時間がかかるといった変化は、単なる「年のせい」ではありません。
これは『加齢性筋肉減少症(サルコペニア)』が進んでいるサインです。
サルコペニアは病気ではなく老化現象の一つです。
筋肉が減少する=「たんぱく質の摂取不足」と思われがちですが、それだけではなく、
- 消化吸収力の低下
- 運動量の減少
- ホルモン分泌の低下
といった複合的な要因で進みます。
つまり「ごはんを食べているのに筋肉が落ちる」という現象は、従来の栄養設計が老犬の体に合わなくなっているのかもしれないということです。
老犬のための「たんぱく質再設計」とは?
若い頃のように「肉をしっかり食べさせればOK」では、老犬の筋肉は維持できません。
ここで必要なのが、「量」ではなく「質と使われ方」に着目した再設計です。
① 消化吸収率を上げる:小さく分解された形で与える
『加水分解たんぱく質(ペプチド)』は腸から吸収されやすく、胃腸に負担をかけません。家庭では「鶏ささみや白身魚をゆでてペースト状にする」「ヨーグルトに少量混ぜる」などが効果的です。
我が家のおじいちゃん犬はペースト状の食事をあまり好みません。ささみも裂いただけの固形状態で与えていました。ですが体重が減り、脚もおしりも細くなってしまった今では、少しでも消化吸収率を上げるためにすりつぶして与えるようになりました。
② 筋肉合成を助ける“鍵栄養素”を組み合わせる
たんぱく質を食べても、筋肉合成に必要な栄養素が不足していると効率が落ちます。
特に重要なのは以下:
- ロイシン(分岐鎖アミノ酸の一種):筋合成スイッチを入れる
- L-カルニチン:脂質をエネルギーに変えて筋肉維持をサポート
- ビタミンB群:アミノ酸の利用を助ける代謝サポート役
これらは高齢犬用サプリでも補えますが、食材から摂るなら以下の表を参考に取り入れてみてください。
老犬の筋肉ケアに効く栄養素と食材表
栄養素 | 主な働き | 犬ごはんで使える食材の例 | 与えるときのポイント |
---|---|---|---|
ロイシン(分岐鎖アミノ酸/BCAA) | 筋肉合成スイッチを入れる主役アミノ酸 | 鶏むね肉、鶏ささみ、牛赤身肉、豆腐、納豆 | 消化に優しい部位を選び、ゆでて細かく刻むと吸収しやすい |
L-カルニチン | 脂質を効率的にエネルギーへ変換し、筋肉維持をサポート | 羊肉、牛赤身肉、鶏むね肉 | 適度な脂質を活かすため脂身は避けて赤身部分を中心に与える |
ビタミンB群 | アミノ酸を筋肉に利用するための代謝を支える | レバー(鶏・牛)、イワシ・サバ、卵黄、ブロッコリー | レバーは週1〜2回少量まで。魚は骨を取り除き加熱して与える |
摂取のポイント:ロイシンは「筋肉のスイッチ役」なので毎日コツコツ摂ることが大切。L-カルニチンは「赤身肉パワー」。ただし脂質は控えめに(脂身は取り除いて、赤身肉の中に自然に含まれる程度の脂質を利用するのがちょうど良い)。ビタミンB群は「代謝の潤滑油」。単体ではなく組み合わせて働くので、多様な食材から摂るのがおすすめ。
老犬は脂質バランスが特に大事!
脂質はエネルギー源として必要ですが、摂りすぎると肥満や心臓病のリスクが高まります。逆に不足すると体力低下や毛艶の悪化につながるため、適量を意識しましょう。
③ 筋肉を“使うタイミング”を逃さない
筋トレをする人の間ではトレーニング後の体が栄養素を最も効率的に吸収し、筋肉成長を促進する『ゴールデンタイム』があるといいます。運動後30分〜2時間以内は、摂取したアミノ酸が筋肉合成に最も利用されやすい時間帯なのです。
このことから、犬も食事と散歩の時間帯を意識することで、より効率よく栄養素を吸収できると考えられています。
- ごはんの前に散歩に出かけるのを習慣づける
- リハビリトレーニングの前後に消化のよいタンパク質を与える
モデルごはん:「朝たん」「夜たん」2段階戦略
時間帯 | 内容 | 目的 |
---|---|---|
朝ごはん | 白身魚+かぼちゃペースト+少量のオリーブオイル | 消化に優しく、日中の活動エネルギーを支える |
夜ごはん | 鶏ささみペースト+白米粥+ブロッコリーパウダー | 回復のためのたんぱく補給+抗酸化サポート |
👉 ポイントは「朝は軽く、夜はリカバリー型」。
夜の食事で筋肉再合成を促し、翌日の活動を支える仕組みです。
筋肉回復のサインを見逃さない
たんぱく質設計を見直したら成果があったかどうか観察してみましょう。
- 立ち上がりがスムーズになった
- 階段や段差のつまずきが減った
- 排便姿勢を長く維持できるようになった
- 散歩の足取りが軽くなった・散歩後も疲れにくい
これらは「筋肉がよみがえり始めたサイン」です。少しの意識と効果が愛犬のQOLを支えていくのです。
まとめ:寝たきりを防ぐ“攻めの栄養ケア”へ
老犬の筋肉維持は「あきらめる」ものではありません。
「たんぱく質をどう再設計するか」を意識するだけでも愛犬の未来のQOLは変化していきます。
食べ方・組み合わせ・タイミングを工夫することで、老犬の体はまだまだ応えてくれます。
寝たきりにさせないために、今日から“攻めの栄養ケア”を始めてみましょう!