
ただ食べるだけじゃだめなのかしら?
なんでもいいけど美味しいものをちょーだい

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【シニア前期】対象:シニアを感じ始めた(感じ始める)初期の犬におすすめの記事となります。
フレイルとは?「老いの入口」にある身体と心の変化
【フレイル】という言葉を知っていますか?
フレイル(frailty)とは、直訳すると「虚弱」や「脆弱性」を意味する言葉です。
もともとは高齢者医療の分野で使われていた概念で、健康な状態と介護が必要な状態の中間にあたる“老いのグレーゾーン”を指します。
犬においても、以下のような変化が見られ始めた時、それは“犬版フレイル”の始まりかもしれません。
- 食欲が落ちた・偏食が増えた
- 筋肉が痩せてきた・足腰が弱った
- 反応が鈍くなった・寝てばかりいる
- 排泄の間隔が不安定になった
こうした状態は「まだ病気ではないけれど、以前のように元気に動けない」段階です。筋肉量の低下・消化吸収力の低下・免疫力の衰え…と複数の要因が絡み合って起こっています。
つまり「食べているのに元気がない」ではなく、“うまく栄養が利用できていない”可能性があるのです。
フレイルは放っておくと加速度的に進行しますが、適切な栄養と刺激(運動・接触)を与えることで回復する可能性も十分にあるのです。
フレイルの兆候に早く気づき、「気づいたその日が最初の日」としてケアを始めることが、老犬の生活の質を守るカギです。
老犬の栄養戦略は「摂る・使う・守る」の3本柱
シニア犬に必要なのは、「食べること」だけではありません。
摂った栄養を体で使える状態に保ち、それを守るサポートが不可欠です。
① 摂る:体に吸収されやすい形で栄養を届ける
✅例:加水分解たんぱく質
筋肉の維持には「たんぱく質」が重要ですが、胃腸が弱る老犬には消化負担が高すぎることもあります。
加水分解(ペプチドレベル)された動物性たんぱく質は、腸から素早く吸収され、筋肉合成にも直結しやすいでしょう。
※加水分解とは、タンパク質を酵素などで分解し、消化しやすい状態にすることです。
🟨使用例:「加水分解鶏肉」「フィッシュペプチド」などが含まれるプレミアムフード
🟨家庭では:鶏ささみを細かく刻んでとろとろに煮る、ブレンダーで攪拌する工夫をするとよいでしょう。
② 使う:摂取した栄養を筋肉や免疫に変える仕組み
✅例:L-カルニチン・ビタミンB群・亜鉛
シニア犬は、栄養を「利用する代謝力」が落ちています。
特に脂質代謝や筋肉合成に関わるL-カルニチンや亜鉛は、知らないうちに不足しがちです。
🟨対策:シニア用サプリで補給、あるいはレバー(少量)、牛赤身肉を週1回程度活用
③ 守る:酸化ストレスや炎症から体を守る
✅例:抗酸化物質(アスタキサンチン、ビタミンE、コエンザイムQ10)
老化は「慢性の酸化ダメージ」とも言われています。
そのスピードを遅らせるためには、抗酸化栄養素が必要不可欠です。
🟨実践例:
- 市販フードにアスタキサンチン配合のものを選ぶ
(アスタキサンチンはサケやカニ、イクラなどに含まれる赤色の天然色素で、トマトの色素(リコピン)やニンジンの色素(β-カロテン)と同じカロテノイドの一種です) - ブロッコリーやかぼちゃを蒸して少量トッピング
- 鮭オイルやナッツオイル(微量)を利用
フレイル予防の「機能性ごはん」モデルメニュー
食材 | 機能 | 一例 |
---|---|---|
鶏ささみ(細かく) | 筋肉合成・消化しやすい | 主たんぱく源 |
かぼちゃ | 抗酸化・腸内環境整備 | ペーストにして加える |
オリーブオイル少量 | ビタミンE補給・代謝促進 | 小さじ1/4以下 |
白米粥 | エネルギー補給・胃の保護 | とろとろ粥 |
ブロッコリーパウダー | ビタミン・フィトケミカルの補強 | トッピング用 |
まとめ:老犬のごはんは「ケアする栄養」へ
老犬にとっては「食べさせる」だけでも大変ですが、この「食べて回復する栄養設計」が、老犬のQOL(生活の質)を大きく左右します。
飼い主自身が知識を持ち、今日からできる工夫を一つずつ積み上げることが、老犬の命の土台になるのです。
老犬のフレイル対策―次回はタンパク質について考えます。